お知らせ
2014年6月3日
高血圧と塩分の話
「塩分を摂り過ぎると高血圧になる。
高血圧の治療では塩分の摂取を控える。
長野県民の平均一日塩分摂取量は 12g/日である。」
ということを よく言われます。
塩分(NaCl)は人間の身体にとって必要不可欠な栄養素、しかし摂取過剰になると身体に悪影響=高血圧を起こします。
人間の身体に必要な塩分量は人体の水分量の約0.85%
人間(成人)は体重の60%は水分なので、体重60Kgの成人なら、体内に必要な塩分量は 60000gX0.6X0.0085=306g
(この塩分量はすでに体内に存在する。摂取と排出が問題!!)
1日の食塩摂取量の目標値は
1日6g未満(日本高血圧学会)
1日5g未満(WHO)
と言われています。
日本高血圧学会減塩委員会よりの提言(2012年7月)では
「高血圧の治療において食塩制限が重要で、日本高血圧学会は1日6g未満を推奨しています。食塩と高血圧との関係はよく知られていますが、食塩摂取量が非常に少ない地域では高血圧の人は見られず、加齢に伴う血圧上昇もほとんどないことが示されています。食塩制限は、正常血圧の人にとっても、高血圧の予防のために意義が大きいと考えられます。
ほとんどの日本人は必要量をはるかに超える食塩を摂取しており、減塩による健康被害は起こりません。しかし、低血圧や起立性低血圧で立ちくらみがある場合など、一部の病態では食塩摂取は多い方がよいこともあります。また、夏に塩分摂取を増やすことは通常は必要ありませんが、汗を大量にかいた場合は例外となります。」
と提言されています。
では塩がどうして高血圧症を起こすのでしょうか?そのメカニズムについて説明します。
- 1.塩分には水をくっつける作用があります。塩分を過剰に摂取すると生物は(人間は)その濃度を薄めるために(正常な濃度に戻すために)水分を欲します。これにより血液の量が増え、心臓がより大きな力を必要とするため血圧が上昇します。それに伴い、貯留した塩分や水分を腎臓から濾して排泄するため、さらに血圧が上昇します。
- 2.塩分には血管を収縮させる働きを持つ交感神経を緊張させる作用があります。塩分摂取の過剰により、血管収縮が活発になり、血管抵抗が上昇し心臓の負荷が増し血圧が上昇します。しかも、この状態が続くと血管に大きなダメージを与え、血管抵抗が益々増し、高血圧が悪化します。
- 3.塩分は血管の中に直接入り込めるため、血管を狭くしてしまいます。
- 4.塩分は筋肉を収縮させる働きも持っているため、筋肉で囲まれた血管を収縮させ、結果的に血圧を上げます。
高血圧は人間だけの病気で、動物には高血圧という病気はありません。(人工的なもの、都会のネズミ、飼い猫、飼い犬は別)
キリンのように長い首の動物は数メートル上にある脳まで血液を押上げなければならないので高い血圧を必要としますが、両足を広げ、大地に這いつくばって水を飲み、草を食べる時は、頚動脈の筋肉が収縮して血管を締め上げ、過度の血圧が脳に働くことを防いでいます。
では動物に高血圧が無いのは何故でしょうか?
答えは、塩を食べないからです。草は塩分を嫌い(津波の後の水田の塩害)それを食べる動物の1日の塩分摂取量は人間の50分の1といわれています。実はマグサイサイ族のように塩を摂らない人種がいます。マグサイサイ族の大人の最高血圧は100mmHgで、塩で食品を調理することはありませんが元気に生きています。高血圧とはまったく無縁な生活を送っています。
おそらく原始人にも高血圧は無かったでしょう。
今から1万2千年ほど前に、人類(A)は岩塩を偶然に発見しました。それまで男たちは毎日狩りに出かけ、味気のない生や、焼いた肉を食べていましたが岩塩を見つけたことにより味付けを知りました。また、狩りで得た肉を岩塩と一緒に洞窟においておくと腐らなくなることも発見しました。遠い隣村の友人(敵)はそれを知りません。肉の保存ができれば毎日の狩りは必要なくなります。
やがて隣村敵(B)達は(A)が狩りに来ないことを知ります。そこで様子を調べると、塩にたどり着く、当然(B)達も塩をほしがります。(A)はこの塩[ソルト(英)、ソールト(米)]を敵から守らねばなりません。塩を巡っての争い、これが人類の戦争の始まりです。ソルトを知った人間はそれを守る人間を配置します。ソールジャー(兵隊)の始まりです。そしてその兵隊さんに給料として塩のサラリー(給与)を与えます。朝一番、会えば塩の話がそのまま挨拶になります。サリュート(挨拶)の始まりです。
このように人類は塩分と縁を結び、塩分を好むようになりました。しかし、いくら食物の内容が変わったとしても人間の遺伝子は1万年やそこらでは変わりません。塩分をどんどん取るようになって、腎臓の排泄能を遙かに上回ることになってしまいます。現代人は腎臓の塩分排泄量を増すため、1日に同じ血液を17回も腎臓を通過するようにしました。0.2×17=3.4gという勘定になります。それから、体毛がなくなり、汗腺からもより多くの塩分を出すようになりました。 それでも間に合わない場合は、「血圧を上げて、塩を濾し出すしかない」という結果にたどり着いたのです。血圧が上昇すれば、腎臓がもっと酷使されるという悪循環に陥ります。
以上の理由より、塩分摂取 1日6g未満 はとても重要なことです。