お知らせ

2012年10月2日

バセドウ病と妊娠について

1.妊娠中は甲状腺機能(甲状腺のホルモンの状態)を正常に保つことが重要です。

バセドウ病が妊娠に与える影響

治療していないバセドウ病で甲状腺ホルモンが多い状態(甲状腺機能亢進症)が持続すると、生理が少なくなったり、停止してしまうことがあります。さらに、甲状腺ホルモン過剰の状態で妊娠しても流産、早産、妊娠中毒症の危険性が増すといわれています。安全な妊娠・出産のためには治療によって甲状腺ホルモンの濃度を正常にしておくことが大切です。一方、母体の甲状腺機能亢進症によって胎児奇形の頻度が増すとの証拠はないようです。

2.バセドウ病の治療薬によって奇形児の頻度が増すとの証拠はありません

妊娠中、授乳中のバセドウ病治療薬

治療は抗甲状腺薬の服用が中心です。抗甲状腺剤(バセドウ病治療薬)にはチアマゾール(メルカゾール)、プロピルチオウラシル(チウラジール、プロパジール)の2種類がありますが、妊娠中、授乳中はプロピルチオウラシルの方が望ましいと考えられています。チアマゾール内服中の母体から頭皮欠損の新生児が生まれた報告がありますが、一般的には抗甲状腺剤によって奇形の頻度が増すとの証拠はありません。

治療しないでホルモンが多いままにしておくほうが害が大きいと考えられています。妊娠したことが判った途端に薬を止めてしまうことは誤りです。薬が必要な場合は妊娠中も続けなければいけません。母乳への薬の移行はプロピルチオウラシルの方が少なく常用量では児の甲状腺機能には影響しません。チアマゾールは母乳中に移行しますが少量の内服から8~12時間たてば授乳してよいとの意見もあります。薬に対するアレルギーがなければ、適切な薬物治療でバセドウ病をコントロールしながら、元気な赤ちゃんを育てることは可能です。

3.バセドウ病は妊娠中には軽くなり安定することが多い疾患です。定期的なホルモン測定によって薬の量を調節します。

妊娠がバセドウ病に与える影響

妊娠週数が進むとバセドウ病は次第に安定します。妊娠後半には薬の必要量が減り中止できることもよくあります。薬物治療中は胎児血中の甲状腺ホルモン(遊離T4)値は母体血中のそれより低めになりますから、母体血中の遊離T4が正常上限から軽度高値になるようにコントロールします。妊娠後半に母体血中のTSHレセプター抗体を測定して新生児甲状腺機能亢進症の可能性の有無を調べておきます。

また、出産直後は一時悪化する傾向があります。これは、妊娠中に病気が軽くなった反動とも言える現象です。妊娠中に減った薬の量を調節することが必要です。妊娠によってバセドウ病が治ったと勘違いして薬の服用をやめてしまったり、受診しないようなことはやめましょう。出産後退院して1ヶ月頃にはホルモンの検査に受診されることをお奨めします。

*ご質問や、不安な点がありましたら気兼ねなくご相談ください。

一覧へ戻る